発見と論文

Discoveries and Papers

2022.09.05

赤血球膜エタノラミンプラズマローゲンとホスファチジルコリンの減少はAD、PD、CADの共通所見

Brain Res Bull 189:5-10, 2022

Decreases of ethanolamine plasmalogen and phosphatidylcholine in erythrocyte are a common phenomenon in Alzheimer's, Parkinson's, and coronary artery diseases

馬渡志郎、深田光敬、有田武史、丸山徹、古野純典、藤野武彦

要旨

慢性の神経変性疾患であるアルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)および冠動脈疾患(CAD)の患者の血漿プラズマローゲンの減少はすでに知られているが、私共はこれらの疾患で赤血球膜エタノラミンプラズマローゲン(PlsPE)も減少していることを既に報告している。本研究では、AD 146人、PD 45人、CAD 30人を対象に、赤血球膜のリン脂質構成(%)を正常高齢者39人と比較した。その結果、PlsPEの減少に伴い、ホスファチジルコリン(PC)が減少し、その代わりにスフィンゴミエリン(SM)が増加していた。一方、ホスファチジルエタノラミン(PE)とホスファチジルセリン(PS)は変化していなかった。この赤血球膜リン脂質の特殊な変化は老齢病であるAD、PD、CADが共通の病因により発症していることの一つの生化学的証拠を示していると思われる。