発見と論文

Discoveries and Papers

2022.06.06

プラズマローゲンの経口投与はネガティブ気分を改善し、精神集中力を高める

Front Cell Dev Biol 2022, 10:894734

Orally Administered Plasmalogens Alleviate Negative Mood States and Enhance Mental Concentration: A Randomized, Double-blind, Placebo-controlled Trial

藤野稔、福田潤、磯貝浩久、大柿哲朗、 馬渡志郎、高木厚司、若菜智香子、藤野武彦

要旨

背景/我々はこれまでにプラズマローゲンがアルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患を改善し、その認知機能を高めることを明らかにしてきた。本研究では、ホタテ由来プラズマローゲンの心理行動学的効果について、大学の運動部員を対象に無作為化プラセボ対照比較二重盲検試験を行った。

方法/運動部に所属する18~22歳の男子学生をプラズマローゲン摂取群(2㎎/日)、プラセボ(偽薬)摂取群のいずれかに無作為に割り当て、4週間の試験を実施した。主要評価項目は気分評価スケールであるPOMS-2(成人用短縮版)のT得点、副次評価項目はPOMS-2の7項目の気分尺度、行動心理学的評価、体力テストおよび臨床検査とした。本試験はJapan Registry of Clinical Trials (jRCT)に登録されている(jRCTs071190028)。

結果/40名の参加者(プラズマローゲン群、プラセボ群 各20名)が4週間の試験を完了した。プラズマローゲン群の気分障害総得点(高い程ネガティブ気分が高い)は4週後にプラセボ群より減少し、両群の群間差は有意傾向にあった (P = 0.07)。「怒り–敵意」および「疲労–無気力」の得点は、プラズマローゲン群で有意に低下したが、プラセボ群では有意な変化は見られなかった。いずれも両群間に高度な有意差が認められた(怒り-敵意:P = 0.003、疲労-無気力:P = 0.005)。アテネ不眠尺度(高い程不眠)は2週後にプラズマローゲン群で減少し、両群に有意傾向の群間差が見られた(P = 0.07)。内田クレペリン検査を用いた精神集中力評価では、プラズマローゲン群はプラセボ群に比べ統計的有意に精神集中力が向上した。体力テストおよび臨床検査では2群間に有意差はなかった。

結論/プラズマローゲンの経口投与は、ネガティブ気分を軽減し、睡眠を改善して、精神集中力を高めることが示唆される。