発見と論文

Discoveries and Papers

2018.12.27

Biochem Biophys Res Commun. 503(2): 837-842, 2018

Biochem Biophys Res Commun. 503(2): 837-842, 2018

Scallop-derived plasmalogens attenuate the activation of PKCδ associated with the brain inflammation

Sanyu Sejimo, Md Shamim Hossain, Koichi Akashi

論文の要旨

プロテインキナーゼCδ(PKCδ)の活性化は神経炎症に関係しているが、アルツハイマー病を含む様々な神経変性疾患との関係はほとんど知られていない。また、グリセロリン脂質の一種であるエタノラミン型プラズマローゲン(Pls)の量がアルツハイマー病患者の脳で減少していることが発見されている。我々は、これまでプPls が神経保護機能や抗炎症作用を持っていることを明らかにしてきたが、本研究では、神経炎症モデルマウスとアルツハイマー病モデルマウスのミクログリアで増加しているPKCδの発現を、Plsが抑制することを明らかにした。また、アルツハイマー病患者の死体脳でもPKCδの発現が上昇していることを発見した。そして、PKCδの発現制御に関わるp38MAPKとJNKタンパクのミクログリア細胞における発現を、ホタテ由来Plsが抑制することを明らかにした。ミクログリア細胞におけるPKCδをレンチウィルス性sh-RNAでノックダウンすると、LPSによって誘導されるp65(NF-kB)の活性化や炎症性サイトカインの発現が減少することが示された。この結果からPKCδは炎症反応を引き起こすことが考えられる。以上より、マウスの脳内で神経炎症に伴い生じているPKCδの発現増加をホタテ由来Plsが抑制することが明らかになった。