発見と論文

Discoveries and Papers

2018.12.26

Mol Neurobiol. Aug 20, doi: 10.1007/s12035-018-1307-2, 2018 

Mol Neurobiol. Aug 20, doi: 10.1007/s12035-018-1307-2, 2018

Plasmalogens Inhibit Endocytosis of Toll-like Receptor 4 to Attenuate the Inflammatory Signal in Microglial Cells

Fatma Ali, Md. Shamim Hossain, Sanyu Sejimo, Koichi Akashi

論文の要旨

ミクログリア細胞の活性化は多くの神 経変性疾患の病理学的特徴であるが、これらの疾患における細胞脂質の役割はほとんど知られていない。特殊なエーテルリン脂質であるプラズマローゲン(Pls)は、アルツハイマー病(AD)患者の脳および血液において減少することが知られている。近年、ホタテ貝由来のPls(sPls)の経口摂取による軽度AD患者の認知機能の改善が報告されたため、我々はミクログリア細胞活性化におけるsPlsの役割を検証するに至った。我々は、リポ多糖(LPS)誘発性ミクログリア活性化モデルを使用し、sPlsがLPSによるTLR4エンドサイトーシスと下流のカスパーゼ活性化とを阻害することを見出した。そして、特異的な阻害剤を使用することによって、TLR4エンドサイトーシスおよびカスパーゼ活性化が、炎症性サイトカイン発現を強く制御することを確認した。さらに、Pls合成酵素であるGNPAT(グリセロリン酸O-アシルトランスフェラーゼ)をsh-RNAによりノックダウンして細胞内のPlsを減少させると、TLR4のエンドサイトーシスおよびカスパーゼ-3の活性化が促進され、炎症性サイトカイン発現の増強をもたらした。我々は、TLR4エンドサイトーシスが、老齢マウスおよびADモデルマウスの脳の皮質において顕著に高かったことも初めて報告し、これはPlsの加齢による減少とミクログリア細胞の活性化との間の有意な相関を示唆している。興味深いことに、ADモデルマウスにおいて、sPlsの飲用によりTLR4エンドサイトーシスが有意に減少した。我々の累積データは、細胞内のPlsがTLR4のエンドサイトーシスを制御することによってミクログリア細胞の活性化を減弱させることを示し、これが軽度AD患者におけるsPlsによる認知機能改善効果のメカニズムとなりうる可能性を示唆している。