発見と論文

Discoveries and Papers

2018.12.25

Biochem Biophys Res Commun. 496(4): 1033-1039, 2018

Biochem Biophys Res Commun. 496(4): 1033-1039, 2018 

Oral ingestion of plasmalogens can attenuate the LPS-induced memory loss and microglial activation

Md. Shamim Hossain, Ayako Tajima, Satoshi Kotoura, Toshihiko Katafuchi

論文の要旨

プラズマローゲン(Pls)は、リン脂質の一種であるが、アルツハイマー病(AD)患者の脳および血液で減少していることが報告されているので、Plsを経口摂取すれば疾患の進行を予防できる可能性が示唆される。興味深いことに、Plsを継続的に経口摂取することにより、軽度AD患者の認知機能が改善されることが臨床研究で明らかになった。しかし、Plsの経口摂取が、例えばグリアの活性化およびアミロイドβ(Aβ)タンパク質の蓄積などのAD患者の脳における変化を抑制するかどうかは解明されていない。Plsの経口摂取効果を明らかにするために、我々はグリア活性化とAβ蓄積を示す慢性リポ多糖(LPS)注射モデルマウスを使用した。本研究では、Plsを0.1㎍ / mlおよび10㎍/ mlの用量で3ヶ月間飲用したマウスの脳において、グリア活性化およびAβタンパク質の蓄積が減弱したことを見出した。興味深いことに、LPS注射によりコントロール群マウスの海馬依存性記憶が減少した一方、Pls摂取群マウスは記憶試験においてより良好な結果を示した。このことから、Plsの経口摂取により脳におけるグリア活性化およびAβの蓄積の減少に関連しているLPS性記憶障害が抑制されることを示唆している。したがって、このことはAD患者のPlsの経口摂取もまた、グリア活性化を抑制して認知機能の改善をもたらしている可能性を示唆している。