発見と論文

Discoveries and Papers

2018.04.09

Practical Laboratory Medicine 10:44–51, 2018

Practical Laboratory Medicine 10:44–51, 2018

Enzymatic measurement of ether phospholipids in human plasma after hydrolysis of plasma with phospholipase A1

Shiro Mawatari, Seira Hazeyama, Tomomi Morisaki, Takehiko Fujino

論文の要旨

ヒト血漿にはエタノラミンエーテルリン脂質(ePE)およびコリンエーテルリン脂質(ePC)が存在している。そのなかで、血漿ePEの大部分はエタノラミンプラズマロゲン(plsPE)である。血漿plsPEはアルツハイマー病や、パーキンソン病、あるいはその他の疾患で正常者より低下していると報告されている。したがって、血漿のePE測定の必要性は今後増加することが予想される。最近は血清のePEの測定には、LC/MS/MSが用いられている。しかし、LC/MS/MSのシステムは高価で、測定にも、またその維持管理にも時間がかかる。私どもは、ヒト血漿のePE,およびePCを、比較的安価で、すでに多くの臨床検査室に備えられているマイクロプレートリーダーを用いて測定が可能な酵素法を開発した。血漿に麹菌由来のホスホリパーゼA1を加えて37℃で1時間作用させると、ヂアシルリン脂質は完全に分解されるが、エーテルリン脂質はそのまま残る。残ったエーテルリン脂質にホスホリパーゼDを作用させると、ePEからはエタノラミンが、ePCからはコリンが産生する。エタノラミンはアミンオキシダーゼで、コリンはコリンオキシダーゼで、それぞれ過酸化水素(H2O2)に変換し、産生した過酸化水素(H2O2)をアンプレクスレッド(amplex red)でレゾルフィン(resorufin)に変換して蛍光光度計で測定する。H2O2の測定は蛍光光度法でなくても、色素法でも可能であり、したがって、分光高度計でも可能である。この方法は、血漿のエーテルリン脂質だけでなく、その他の組織のエーテルリン脂質の測定にも応用できる。