発見と論文

Discoveries and Papers

2018.02.23

Effects of Plasmalogen on Patients with Mild Cognitive Impairment: A Randomized, Placebo-Controlled Trial in Japan

軽度認知障害に対するプラズマローゲンの効果:日本における無作為化プラセボ対照試験

藤野武彦1)、山田達夫2)、朝田隆3)、市丸みどり4)坪井義夫5)、若菜智香子6)馬渡志郎7)

1)プラズマローゲン研究会、2)五反田リハビリテーション病院3)メモリークリニックお茶の水4)BOOCSホリスティッククリニック東京5)福岡大学 医学部 神経内科科学6)BOOCSクリニック福岡7)レオロジー機能食品研究所

要旨

目的/アルツハイマー病(AD)患者の脳組織および血液におけるプラズマローゲン(Pls)の減少が報告されている。我々の研究では、まずAD動物モデルに対するPlsの効果を確認し、続いてヒトにPls1mg投与し、その効果を検証した。軽度認知障害(MCI)および軽度ADを対象とする無作為化プラセボ対照試験(RCT)を実施、その有効性を報告した。本研究は、先行RCTで行ったMCI患者のミニメンタルステート検査-日本版(MMSE-J)の結果を項目毎に検討した。
方法/先行RCTの対象者276名(MCIと軽度AD)のうち、MCI患者178名の分析を行い、MMSE-J各項目について24週間の点数変化を検証した。先行RCTは年齢60-85歳、MMSE-J20-27点、高齢者用うつ尺度短縮版-日本版5点以下の276名を対象として実施したものである。同試験では対象者はホタテ由来Pls1mg/日摂取群、プラセボ群のいずれかに無作為に割り付けられた。本試験の主要評価項目は24週間のMMSE-Jの点数変化とした。(登録番号:UMIN000014945)
結果/MMSE-J総得点では、Pls治療群は統計的有意に上昇したが、プラセボ群は有意な改善を示さなかった。しかし群間差は有意ではなかった。MMSE-Jの質問項目の1つである場所の見当識では、Pls治療群で有意な改善が見られ、プラセボ群では見られなかった。その群間差は統計的に有意であった(p=0.003)。時間の見当識では、プラセボ群で終了時に有意な悪化が確認され、Pls治療群では確認されなかったが、その群間差は統計的に有意ではなかった。MMSE-Jの他の項目については、いずれも有意な変化は認められなかった。
結論/これらの結果は、Pls1mgの経口摂取はMCI患者の認知機能、とりわけ場所の見当識を高めることを示唆している。