発見と論文

Discoveries and Papers

2017.06.01

PLoS ONE 11(3): e0150846, 2016

PLoS ONE 11(3): e0150846, 2016

Shamim Hossain, Kurumi Mineno, Toshihiko Katafuchi Neuronal Orphan G-Protein Coupled Receptor Proteins Mediate Plasmalogens-Induced Activation of ERK and Akt Signaling.

PLoS ONE11(3):e0150846, 2016

論文の要旨

われわれはプラズマローゲン(Pls)が神経細胞のAktやERK1/2などの蛋白リン酸化酵素の活性を増強することによって神経細胞死を抑制することを報告した(PLoS ONE 2013, 8(12): e83508)が、その機序については不明であった。近年、種々の脂肪酸やグリセロリン脂質がそれぞれに特異的なG蛋白結合型受容体(GPCR)を有することが明らかになってきたが、今回われわれは、Plsによる細胞シグナル伝達機序として、これまでリガンドが不明であるGPCR、いわゆるorphan(孤児)GPCRに注目し、培養神経細胞を用いて実験を行った。まずはじめにPlsによるERKの活性化がG蛋白阻害剤で完全に抑制されたことから、GPCRの関与が明らかになった。次に19種のorphan GPCRについて神経細胞に強く発現している10種のGPCRを選び、その発現をショートヘアピンRNAレンチウイルスでノックダウンした。その結果GPR1、19、21、27、および61のノックダウン細胞でPlsによるERKおよびAktの活性化が抑制された。次にこれらのGPCRを過剰発現させると、PlsによるERKおよびAktのリン酸化が増強した。もっとも興味深いことは、Pls合成酵素のノックダウンによる内因性Plsの低下によってGPCRを介したシグナル伝達の増強が顕著に減少したことであった。このことは、神経細胞自身がPlsをシグナル伝達物質として放出している可能性を示唆している。以上から、Plsによる細胞シグナル伝達機序として特定の5種のGPCRの関与が初めて明らかになった。