アルツハイマー型認知症と強い相関関係を持つプラズマローゲン(Pls)。その関係性を明らかにする動物実験を行いました。
「モリスの水迷路」と呼ばれているもので、マウスをプールで泳がせ、水面下2cmに隠れている透明のステージにたどり着く実験です。その時間が短縮されるかで記憶力を見ます。その結果プラズマローゲンには記憶・学習を向上させる効果があることが証明されました。
そのメカニズムは、脳細胞の表面にある重要な物質が乗っている“リピッド・ラフト”と言われる場所に、プラズマローゲンが多く存在することで、“トラックB”を増やし、そのトラックBを受容体とする、記憶・学習に関係する物質“BDNF(脳由来神経栄養因子)”を導いて、記憶・学習力を活性化しているためと思われます。
アルツハイマー病など神経炎症を起こすと、トラックBが減少し、BDNFの作用発現が著しく低下します。プラズマローゲンは低下した神経細胞の機能を改善・向上させる役割をはたしていると考えられます。
さらに、プラズマローゲンがアルツハイマー型認知症の原因とされる“アミロイドβタンパク質”の蓄積を抑制する作用を持つことを発見しました。
「プラズマローゲンは中枢神経系では、重要な役割を果たしている可能性があります。
アルツハイマー病に限らず、うつ病も脳の神経炎症が起こっている結果であると、わかってきたので、プラズマローゲンは神経炎症系の疾患にも、効果を発揮する可能性があります」(片渕教授)