発見と論文

Discoveries and Papers

2020.01.17

Scientific Reports 10: 427, 2020

Scientific Reports 10: 427, 2020

Identification of plasmalogens in Bifidobacterium longum, but not in Bifidobacterium animalis

馬渡志郎、貴家康尋、森﨑智美、大久保美伽、江村貴子、藤野武彦

要旨

プラズマローゲンはグリセロリン脂質の一つでグリセロール骨格のsn-1位にヴィニルエーテル結合を持っているリン脂質である。プラズマローゲンは哺乳類(ヒト)の細胞で多くの重要な機能をしていることが知られている。他方、ヒトの腸内細菌はヒトの健康に多くの有用な働きをしていることも知られている。腸内細菌の中でクロストリジウム菌にプラズマローゲンが存在していることはよく知られているが、クロストリジウム菌は一般に善玉菌とはみなされていない。しかし、ヒトにおいて最も重要な善玉菌と考えられているビフィズス菌にプラズマローゲンが存在していることは知られていなかった。私共はビフィズス菌の中でも、最も重要と考えられているビフィズス菌 Bifidobacterium longum種にプラズマローゲンが存在していることを認めた。Bifidobacterium longum種のプラズマローゲンの主要なリン脂質はカルジオリピン(cardiolipin)、ホスファチジルグリセロール(phosphatidylglycerol)およびホスファチジン酸(phosphatidic acid)であった。これらのリン脂質はヒトの細胞(脳)の主要なリン脂質とは異なるが、報告されている多くの「腸内細菌 – 腸 – 脳」軸の機能と、報告されているプラズマローゲン自体の機能とは多くの面で重複していることは、興味深いことである。従って、善玉菌であるビフィズス菌のプラズマローゲンも「腸内細菌―腸―脳」軸に重要な作用をしている可能性が考えられる。