発見と論文

Discoveries and Papers

2019.08.22

Journal of Alzheimer’s Disease & Parkinsonism 9: 474, 2019

Journal of Alzheimer’s Disease & Parkinsonism 9: 474, 2019

Effects of Plasmalogen on Patients with Moderate-to-Severe Alzheimer’s Disease and Blood Plasmalogen Changes: A Multi-Center, Open-Label Study

藤野武彦、山田達夫、馬渡志郎、新福尚隆、坪井義夫、若菜智香子、古野純典

論文の要旨

目的/プラズマローゲン(Pls)は、sn-1位にビニルエーテル結合を有するグリセロリン脂質の一種である。最近、アルツハイマー病(AD)患者の脳と血中においてPls濃度が低下していることから、PlsとADとの密接な関係が明らかになった。我々はすでにAD動物モデルでの研究およびヒト軽度認知障害(MCI)、軽度ADでの無作為化比較試験でPlsが認知機能を改善することを報告した。本研究は中等度から重度ADに対するPlsの認知機能改善効果をオープンラベル試験で検討した。
方法/60〜85歳の日本人でミニメンタルステート検査(MMSE)の結果が19点以下の患者を対象とし、ホタテ由来Pls1.0mg/日か0.5mg/日のいずれかを割当て、12週間投与した。主要評価項目はMMSE、副次評価項目はホスファチジルエタノールアミンPls(PlsPE)の血中濃度とした。
結果/組入れた157名のうち142名が試験を完了した。12週投与後にMMSEが統計的に有意に改善し、投与量による差は認められなかった。赤血球膜PlsPEおよび血漿PlsPEに関しては、ベースライン時には健常者と比べて著しく低かったが、投与後には対象者全員が有意に上昇した。投与量による差は赤血球膜PlsPEでは見られなかったが、血漿PlsPEでは1.0mg投与群よりも0.5mg投与群において、より顕著な上昇を示した(P=0.001)。赤血球膜PlsPEの変化量はMMSEの変化量とやや相関が見られた(Pearson’s r=0.20, P=0.01)。一方、血漿PlsPEの変化量に関して相関関係はなかった。
結論/これらの結果は、ホタテ由来Plsの経口投与により中等度から重度 AD患者の認知機能を改善すること、またPls血中濃度の測定がAD重症度と治療経過の評価に有益であることを示唆する。