発見と論文

Discoveries and Papers

2018.12.28

Neuroscience 397: 18–30, 2019

Neuroscience 397: 18–30, 2019

PUFA-Plasmalogens Attenuate the LPS-Induced Nitric Oxide Production by Inhibiting the NF-kB, p38 MAPK and JNK Pathways in Microglial Cells

Mohammed Youssef, Ahmed Ibrahim, Koichi Akashi, Md Shamim Hossain

論文の要旨

特殊なリン脂質であるプラズマローゲン(Pls)は、アルツハイマー病などの神経変性疾患の脳内で減少していることが報告されているが、それらの疾患ではグリア活性化の顕著な増加をしばしば伴うことが知られている。我々は以前、脳内Plsの減少によりマウスの脳におけるグリア活性化が増進することを見出した。しかし、グリア活性化の抑制に関するPlsの詳細な役割はほとんど分かっていない。本論文では、ホタテから抽出したPls(sPls)が、LPS(リポ多糖)によって活性化されたミクログリア細胞における誘導型の一酸化窒素合成酵素(NOS2)および一酸化炭素の生成を有意に阻害することを明らかにした。また、多価不飽和脂肪酸( ドコサヘキサエン酸:DHA)含有PlsはNOS2誘導を軽減するが、一価不飽和脂肪酸(オレイン酸)含有Plsでは見られなかった。sPlsは、核因子NF-kBおよびJNKやp38MAPKなどのマイトジェン活性タンパク質キナーゼ(MAPK)の活性化を阻害し、それにより、NF-kBサブユニットであるp65およびアクチベータータンパク質(AP)-1(c-Fos、c-Jun)の核移行を軽減させた。興味深いことに、ミクログリア細胞においてLPS処理はp38MAPKおよびJNK経路を介し、Pls合成酵素であるグリセリンホスフェートO-アシルトランスフェラーゼ(GNPAT)およびアルキルグリセリンホスフェートシンターゼ(AGPS)の発現を抑制した。さらに、sh-RNAによるGNPATおよびAGPS遺伝子のノックダウンは、LPS誘発性p38MAPKおよびJNKの活性化を促進し、一酸化窒素の生成が増加するに至った。これらの結果から、脳内Plsの減少がNF-kB、p38MAPKおよびJNK経路を活性化し、神経変性疾患の脳内の神経保護機能を低下させる長期のミクログリア細胞活性化を誘発することが示唆される。