発見と論文

Discoveries and Papers

2018.10.26

Cardiology and Angiology: An International Journal 7(4): 1-11, 2018

Cardiology and Angiology: An International Journal 7(4): 1-11, 2018

Plasma and Erythrocyte Membrane Plasmalogens in Patients with Coronary Heart Diseases Undergoing Percutaneous Intervention.

Takeshi Arita, Taku Yokoyama, Shohei Moriyama, Kei Irie, Mitsuhiro Fukata, Keita Odashiro, Toru Maruyama, Seira Hazeyama, Shiro Mawatari, Takehiko Fujino, Koichi Akashi.

論文の要旨

目的/プラスマローゲンは生体膜におけるユニークなリン脂質で内因性の抗酸化物質としての役割を持つ。動脈硬化はその発症から進展まで酸化ストレスが関与しているが、動脈硬化とプラスマローゲンとの関係にはいまだ議論が多い。そこで今回、冠動脈形成術を受けた冠動脈疾患患者において、血漿および赤血球膜のリン脂質プロファイルを検討した。

方法/冠動脈疾患患者(30名)と年齢をマッチさせた対照者(38名)で血漿および赤血球膜のリン脂質プロファイルを高速液体クロマトグラフィーと蒸散光散乱法にて定量した。

結果/プラスマローゲンの血漿濃度は対照者より冠動脈疾患患者で有意に低く、赤血球膜のプラスマローゲン量も同様であった。重回帰分析ではプラスマローゲン以外のリン脂質がプラスマローゲンの変動の寄与因子であり、さまざまな臨床背景はプラスマローゲンと関連性を認めなかった。これはプラスマローゲンが内因性の抗酸化物質である点に矛盾しない。

結論/今回の横断研究で血漿および赤血球膜のプラスマローゲンは、冠動脈形成術を受ける程度の冠動脈疾患では低下することが明らかとなった。内因性のプラスマローゲンが酸化ストレスの新たな指標となるか、また外因性のプラスマローゲンが動脈硬化の新規治療となるかは、今後の縦断研究を待つ必要がある。