発見と論文

Discoveries and Papers

2017.06.03

Lipids in Health and Disease 2012, 11:161

Lipids in Health and Disease 2012, 11:161

Shiro Mawatari, Toshihiko Katafuchi, Kiyotaka Miake and Takehiko Fujino:Dietary plasmalogen increases erythrocyte membrane plasmalogen in rats.

Lipids in Health and Disease 2012, 11:161

論文の要旨

背景:プラズマローゲンの欠乏を原因とする疾患は数多く報告されている。このような疾患に対しプラズマローゲン組織を補充することは、当該疾患の患者には有効と考えられるが、プラズマローゲンの哺乳類への経口投与の効果は未だ報告されていない。

方法/プラズマローゲンは鶏皮から精製した。精製プラズマローゲンの組成は、エタノラミンプラズマローゲン(PlsEtn)が96.4%、コリンプラズマローゲン(PlsCho)が2.4%、スフィンゴミエリン(SM)が0.5%であった。精製プラズマローゲンを0.1%含有する食餌(PlsEtn餌)をラットに与えた。変質していないプラズマローゲンを他のリン脂質から1回のクロマトグラフィーで分離できる高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法を用い、リン脂質の相対組成を測定した。

結果/PlsEtn餌をズッカー糖尿病肥満(ZDF)ラットに4週間与えたところ、コントロール群と比較して、血漿コレステロールおよび血漿リン脂質が減少した。その他、トリアシルグリセロール、ブドウ糖、肝機能および腎機能、アルブミン等、通常の血漿検査の数値、ならびに体重には、違いは見られなかった。PlsEtn餌投与群では、赤血球PlsEtnおよびホスファチジルエタノールアミン(PE)の相対組成は増加したが、ホスファチジルコリンの相対組成は減少した。PlsEtn餌を正常ラットに9週間与えた場合にも血漿コレステロールおよび血漿リン脂質が減少し、それにより赤血球細胞膜中のPlsEtnの相対組成が増加した。その他通常の血漿検査の数値、ならびに体重には違いは見られなかった。

結論/正常ラットおよびZDFラットにPlsEtnを経口投与すると赤血球細胞膜中のPlsEtnの相対組成が増加し、それにより血漿コレステロールおよび血漿リン脂質が減少する。正常ラットにPlsEtn餌を9週間与えた場合でも、その健康状態への悪影響は一見認められない。