発見と論文

Discoveries and Papers

2017.06.02

Journal of Neuroinflammation 2012, 9:197

Journal of Neuroinflammation 2012, 9:197

Masataka Ifuku, Toshihiko Katafuchi, Shiro Mawatari, Mami Noda, Kiyotaka Miake, Masaaki Sugiyama and Takehiko Fujino: Anti-inflammatory / anti-amyloidogenic effects of plasmalogens in lipopolysaccharide-induced neuroinflammation in adult mice. Journal of Neuroinflammation 2012, 9:197

論文の要旨

背景/神経炎症は、アルツハイマー病などの神経変性疾患におけるグリア細胞の活性化を引き起こす。プラズマローゲン(Pls)は細胞膜を構成するグリセロリン脂質であり、膜流動性や、細胞の小胞融合・シグナル伝達などの過程において重要な役割を果たしている。

方法/本研究では、成体マウスの免疫組織化学検査、リアルタイムPCR、および脳中のグリセロリン脂質量の分析を行い、LPS誘導性の全脳性神経炎症に対するPlsの予防効果を調べた。

結果/LPS(250μg/kg)を7日間腹腔内注射した結果、前頭前野と海馬においてIba-1陽性ミクログリア細胞とグリア線維性酸性タンパク質陽性のアストロサイトの数が増加し、同時にIL-1βおよびTNF-α mRNAが強く発現した。さらに、LPS投与群のマウスには、前頭前野と海馬にβアミロイド(Аβ1-16)陽性ニューロンが発現した。ところがLPSを注射した後にPls(20mg/kg、腹腔内注射)を同時投与すると、サイトカイン産生を伴うグリア細胞の活性化とАβタンパク質の蓄積が著しく減弱した。また、前頭前野と海馬におけるPlsの含有量がLPSによって減少したが、Plsの同時投与で、その減少は抑制された。

結論/上記所見から、Plsには抗神経炎症作用とアミロイド生成予防効果があると考えられ、アルツハイマー病の予防または治療へのPlsの応用が示唆される。