発見と論文

Discoveries and Papers

2017.06.01

EBioMedicine 17: 199-205, 2017

EBioMedicine 17: 199-205, 2017

Efficacy and Blood Plasmalogen Changes by Oral Administration of Plasmalogen in Patients with Mild Alzheimer's Disease and Mild Cognitive Impairment: A Multicenter, Randomized, Double-blind, Placebo-controlled Trial

Takehiko Fujino, Tatsuo Yamada, Takashi Asada, Yoshio Tsuboi, ChikakoWakana, Shiro Mawatari, Suminori Kono

論文の要旨

背景/プラズマローゲン(Pls)がアルツハイマー病(AD)の死体脳および患者血液で減少していることが明らかになってきた。我々の動物実験においてPlsを腹腔内投与すると認知機能が改善することを最近報告した。本研究では、軽度ADと軽度認知障害(MCI)を対象にホタテ由来Plsの経口投与による認知機能改善効果と血中Plsの変化を検討する。

方法/本試験は軽度ADとMCIを対象とした多施設、無作為、二重盲検、プラセボ対照による24週間の研究である。参加者の年齢は60〜85歳で、ミニメンタルステート検査-日本語版(MMSE-J)20~27点、高齢者用うつ尺度短縮版-日本版(GDS-S-J)5点以下の328名を登録し、ホタテ由来Pls 1mg/日摂取群とプラセボ群に無作為に割り付けた。患者、試験担当者とも割付について知らされなかった。主要評価項目はMMSE-J、副次評価項目はウェクスラー記憶検査-改訂版(WMS-R)、GDS-S-J、赤血球膜および血漿のホスファチジル・エタノールアミン・プラズマローゲン(PlsPE)濃度とした。本試験は大学病院医療情報ネットワークにID UMIN000014945として登録されている。

結果/登録された328名のうち276名が試験を終了した(治療群140名、プラセボ群136名)。軽度AD(20≦MMSE-J≦23)とMCI(24≦MMSE-J≦27)を含む治療企図解析(ITT解析)において、主要評価項目、副次評価項目ともに上昇し、治療群とプラセボ群の群間に有意差は見られなかった。また、両群とも重篤な有害事象の報告はなかった。軽度ADでは治療群においてWMS-Rが有意に改善し、両群間で有意に近い差が見られた(p=0.067)。軽度ADのサブグループ解析では、治療群の77歳以下の症例と女性でWMS-Rが有意に改善し、両群間に統計的有意差が見られた(p=0.029、p=0.017)。軽度ADでは、血漿PlsPEがプラセボ群で治療群より有意に低下していた。

考察/ホタテ由来精製Plsの経口投与で、軽度ADの記憶機能が改善することを示唆している。